開催日 2003年6月1日(日)
場所 日本大学歯学部大講堂(1号館 4階)東京都千代田区神田駿河台1-8-13
主管 日本大学歯学部生理学教室
〒101-8310東京都千代田区神田駿河台1-8-13
TEL:03-3219-8122
FAX:03-3219-8341
当日会費 会員:3000円 非会員:4000円
共催 口腔顔面痛懇談会第3回研究会、グラクソ・スミスクライン株式会社、株式会社ツムラ
大会長 岩田幸一
準備委員長 坪井美行

プログラム

9:00

会長挨拶

Section1

9:05~9:50

一般演題

座長:成田紀之

1)顎関節症の疑いで来科し群発頭痛と診断された1例
日本大学歯学部歯科放射線科:本田和也
日本大学歯学部歯科補綴学教室局部床義歯学講座:月村直樹
2)顎関節症治療を契機に診断に至った群発頭痛の1例
慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室:和嶋浩一、田上亜紀、大塚友乃、村岡渡、中川種昭
3)オトガイ部知覚鈍麻から明らかになった顎骨内悪性腫瘍転移『numb chin syndrome』の一症例
九州歯科大学歯科麻酔学講座口腔神経科・疼痛外来:坂本和美、椎葉俊司、長畑佐和子、大津ナツミ、吉田充広、坂本英治、仲西修
日本大学歯学部口腔診断学教室:今村佳樹

Section2

9:50~11:05

一般演題

座長:松本茂二

4)三叉神経節ニューロンの興奮性に対するアドレナリンα2受容体の役割
日本歯科大学歯学部 生理学講座:武田守、池田水脈、谷本武、J Lipski、松本茂二
5)歯痛伝達に対するセロトニン作動性疼痛抑制におけるGABAA受容体とオピオイド受容体の役割
日本歯科大学・歯学部・生理学講座:谷本武、武田守、西川利実、松本茂二
6)実験的筋痛が顎反射に及ぼす影響
新潟大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面機能学分野:黒瀬雅之、山村健介、井上誠、野口真紀子、Sajjiv Ariyasinghe、山田好秋
7)痛みと交感神経緊張
滋賀医科大学生理学第一講座:小山なつ、岩下成人
10:50~11:05

休憩

Section3

11:05~12:05

特別講演

座長:岩田幸一

Peripheral and Central Nociceptive Mechanisms in the Trigeminal System: A Key for Understanding Symptoms and Management of Orofacial Pain.
Division of Biological Sciences, Faculty of Dentistry, University of Toronto:Barry J Sessle
12:15~13:15

ランチョンセミナー

座長:和島浩一

帯状疱疹、歯科と関わるヘルペスウイルス感染症
慶應義塾大学医学部 皮膚科:小菅治彦
13:15~13:45

総会

Section4

13:45~14:45

一般演題

座長:窪木拓男

8)歯痛を初発症状とした三叉神経II・III枝領域帯状疱疹
慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室:永利裕子、和嶋浩一、大塚友乃、矢郷香、中川種昭
9)水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による歯髄炎(様症状)は存在するか?
静岡市立清水病院口腔外科:井川雅子、村岡渡、池内忍
静岡市立清水病院口腔皮膚科:杉浦 丹
10)持続性神経障害性疼痛患者の服薬状況に関する長期予後経過
岡山大学歯学部附属病院 顎関節症・口腔顔面痛み外来:永松千代美、峯篤史、前川賢治、窪木拓男、矢谷博文
11)原因不明の歯痛にメフェナム酸が有効であった一症例
東京歯科大学歯科麻酔学講座:野村仰、懸秀栄、一戸達也、金子譲

Section5

14:45~16:00

一般演題

座長:瀬尾憲司

12)Neuropathic tooth pain と考えられる一症例
九州歯科大学歯科麻酔学講座口腔神経科・疼痛外来:坂本英治、椎葉俊司、吉田充広、坂本和美、長畑佐和子、大津ナツミ、仲西修
日本大学歯学部口腔診断学教室:今村佳樹
13)幻歯痛の診断を考える
東京歯科大学水道橋病院歯科麻酔科・口腔顔面痛みセンター:福田謙一、笠原正貴、半田俊之、村松淳、金子譲
14)眼窩下神経 CCI モデルラットに対するGabapentin および Pregabaline 投与の有効性に関する研究
日本大学歯学部病理学教室:野村洋文
日本大学歯学部生理学教室:坪井美行、岩田幸一
15)ヒト口腔顔面痛に伴う感覚異常の発現に関する実験的検討
日本大学松戸歯学部歯科補綴学第三講座、顎関節咬合診療科、口腔科学研究所:成田紀之
産業技術総合研究所:遠藤博史
日本大学松戸歯学部歯科補綴学第三講座、口腔科学研究所:石井智浩
16)三叉神経第2枝損傷モデル動物における主知覚核ニューロンの反応性
日本大学歯学部生理学教室、日本大学歯学部総合歯学研究所機能形態部門:坪井美行、岩田幸一
日本大学歯学部生理学教室:呉軍
日本大学大学院 口腔外科II:渡部達久
日本大学大学院 局部床義歯:三橋裕
16:00~16:15

休憩

Section6

16:15~17:15

一般演題

座長:今村佳樹

17)心療内科医との合同症例検討会の試み
九州歯科大学歯科麻酔学講座 口腔神経・疼痛外来:椎葉俊司、坂本英治、坂本和美、長畑佐和子、大津ナツミ、吉田充広、仲西修
18)当帰芍薬散が著効した非定型顔面痛の1症例
東北大学大学院歯学研究科顎顔面口腔外科学講座顎外科咬合形成学:千葉雅俊、福井功政、越後成志
19)チーム医療が奏効した外傷後の顔面痛の一例
正司歯科:正司喜信
20)慢性口腔、顎、顔面痛患者を対象とした疼痛教室の試み
東京医科歯科大学大学院疼痛制御学:川島正人、芝地貴夫、山崎陽子、真秀重成、鈴木長明
長崎大学大学院生体情報科学:戸田一雄
16:25~

閉会の挨拶

口腔顔面痛懇談会第4回研究会 抄録集

演題名 顎関節症の疑いで来科し群発頭痛と診断された1例
演者 日本大学歯学部歯科放射線科:本田和也
日本大学歯学部歯科補綴学教室局部床義歯学講座:月村直樹
目的 初診で顎関節症と診断され、放射線科に来科しOrofacial Pain的疼痛診査の結果、群発頭痛と診断された1例を経験したので報告する。
症例 29歳男性 主訴:頭・頬がズキズキ痛い
既往歴:甲状腺機能亢進症。
現病歴:約3週間前から頭痛がおき、脳神経外科や耳鼻科を受診したが異常はないと言われた。歯が原因ではないかと指摘され、某歯科医院を受診したが、疼痛の原因が不明なので来院。
現症:左右上顎8は萌出し、頬側歯肉に潰瘍形成がある。下顎左側8に知歯周囲炎が認められる。顔貌は左右対称、リンパ節、舌および扁桃に異常はない。最大開口量3横指あり関節雑音は認められない。
Orofacial Pain的疼痛診査:Locationは左側後頭部から左側眼窩上部。Qualityは、左側後頭部は脈を打つようにズキズキ痛む、左側眼窩上部は指でお されるような疼痛。Durationは2~3時間程度。Initiationは指で頭部を押すと痛みだす、また運動しても痛む。Frequencyは1日 多いときで2回。Aggravationは仕事と肩こり。Alleviationは痛み出したら無い。上記の結果から群発頭痛が疑われ、医学部のペインク リニックに紹介した。
治療経過:ペインクリニックではテラナス2T朝夕服用、ゾーミック1T頓用頭痛時服用、五苓散3P毎食後服用を処方された。現在、頭痛は軽減され経過観察が行われている。
演題名 顎関節症治療を契機に診断に至った群発頭痛の1例
演者 慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室:和嶋浩一、田上亜紀、大塚友乃、村岡渡、中川種昭
目的 発症以来、13年間に延べ20施設を受診検査、治療を受けるも診断に至らず、顎関節症治療を契機に、3年周期の群発頭痛の診断に至った一例を報告する
症例 30歳女性 主訴:左側顎関節痛、左側顔面痛および左側頭部痛
現病歴と経過:平成元年頃に左側頭部痛が初発。数年間隔で同様の顔面痛生じ、10数カ所の大学病院、病院を受診するも、原因不明と診断。平成10年秋に顔 面痛再発、非定型三叉神経痛の診断にて三叉神経減圧術、約一ヶ月間疼痛持続した後、消失。平成13年10月、左側顔面痛再発。舌咽神経痛の診断にて舌咽神 経減圧術、疼痛消失。しかし、左側顎関節の激しい運動時痛および自発痛が出現。関節痛誘発試験にて再現性のある疼痛、関節腔内麻酔奏功することから、末梢 知覚神経の過敏化を伴う顎関節症と診断。薬物療法、理学療法により改善。平成14年1月に激しい顔面痛が再発、発作時は外出不能。群発頭痛を疑い、神経内 科医に精査依頼。一週間後に顔面痛が生じ救急受診、群発頭痛と診断され、スマトリプタン注射にて消失。考察 本症例は疼痛発作時、顔面皮膚に知覚亢進と低 下が認められ、顎関節部には著明な知覚過敏が認められた。関節痛は単純な炎症によるものではなく、中枢性の知覚神経過敏が生じているものと考えられた。
演題名 オトガイ部知覚鈍麻から明らかになった顎骨内悪性腫瘍転移- numb chin syndrome-の一症例
演者 九州歯科大学歯科麻酔学講座口腔神経科・疼痛外来:坂本和美、椎葉俊司、長畑佐和子、大津ナツミ、吉田充広、坂本英治、仲西修
日本大学歯学部口腔診断学教室:今村佳樹
目的 オトガイ部の異常感覚から腫瘍の下顎骨転移が明らかになったnumb chin syndromeの一症例を報告する。
症例 69歳男性 主訴:左オトガイ部の知覚鈍麻、接触痛
現病歴と経過:口腔内外からは肉眼的にもレントゲン上でも明らかな異常は認められなかった。一方感覚検査では訴えと一致した左オトガイ神経に限局した部位 に閾値上昇とAllodyniaを認めた。既往歴に平成元年直腸癌、平成12年前立腺癌があり、定期的な観察が続けられていた。閾値上昇はあるものの神経 損傷を来す明らかな既往はなかったため腫瘍の存在を確認するべく下顎骨体部のCT検査を行ったところ、下顎孔付近に腫瘍様の陰影と骨の破壊像が認められ た。泌尿器担当医にて施行された骨シンチから左下顎骨と他臓器への集積を認め、口腔内組織の組織精検から前立腺癌の転移であることが明らかとなり、悪性腫 瘍の転移によるnumb-chin syndromeと診断された。
結論 ニューロパシーは患者の訴えだけでは診断に難渋する。本症例ような顎骨への腫瘍転移が感覚異常として初発するnumb chin syndromeもあるため十分な診査と他科との連携が重要である。
演題名 三叉神経節ニューロンの興奮性に対するアドレナリンα2受容体の役割
演者 日本歯科大 歯学部 生理学講座:武田守、池田水脈、谷本武、J Lipski、松本茂二
目的 アドレナリンα2受容体によりTRGニューロンの興奮性が変調するか否かを電気生理学的、及び分子生物学的に解析した。
方法 幼若ラットの小型TRGニューロンを急性分離後、穿孔パッチクランプ法を用いて、アドレナリンα2受容体 (ARα2)作動薬により膜興奮性が変調するかを検討し、この反応に関与するイオン機構を解析した。またSingle-cell-RT-PCR法により ARα2受容体の発現を検討した。
結果 TRGニューロン(72%)の膜電位は、ARα2受容体作動薬であるClonidine(CL)の投与により濃 度依存性の膜抵抗の増加を伴う、過分極性応答を示した。この応答はα2受容体拮抗薬(Idazoxan)により拮抗された。CL投与により、過分極パルス を与えて誘発されたIh (Hyperpolarization-activated current)はCLにより有意に減少し、またIh電流は、特異的拮抗薬である、ZD7288により抑制された。一方Single-cell RT-PCRより、単一のTRGニューロンにおいて、ARα2A受容体及びα2c受容体のmRNAの発現が確認された。
結論 三叉神経節ニューロンの興奮性は、アドレナリンα2受容体の活性化により過分極することにより抑制され、その効果はIhの減弱により発現することが示唆された。
演題名 歯痛伝達に対するセロトニン作動性疼痛抑制におけるGABAA受容体とオピオイド受容体の役割
演者 日本歯科大学・歯学部・生理学講座:谷本武、武田守、西川利実、松本茂二
目的 迷走神経求心路条件刺激(VAS)による歯髄刺激に応答する第一頸髄後角(C1)ニューロン活動の抑制は、5- HT3受容体を介する postsynapticな反応であるがことが示唆されているが、その詳細な作用機序は不明である。そこで今回は、微小電気泳動投与法を用いて脊髄内局所 の抑制機構について解析した。
方法 麻酔下ラットにおいて、歯髄刺激に応答したC1ニューロンに対し、ルチバレル微小電極よりグルタミン酸を局所投与しニューロン活動を誘発させ、その興奮性がVAS及び各種薬物の局所投与によりどう変化するかを細胞外誘導法によりユニット放電を記録・定量化して解析した。
結果 VASによるC1ニューロン活動の抑制効果は、29例中25例で5-HT3受容体拮抗薬局所投与により有意にブ ロックされた。そのうちの14例中13例ではGABAA受容体拮抗薬bicuculine局所投与により、6例中4例ではオピオイド受容体拮抗薬 naloxone局所投与により有意にブロックされた。
結論 C1ニューロンでの歯痛伝達に対する5-HT3受容体を介する下行性疼痛抑制系は、大半がGABAA受容体を介するGABA作動性介在ニューロンに、一部にはオピオイド作動性介在ニューロンに作用して発現することが示唆された。
演題名 実験的筋痛が顎反射に及ぼす影響
演者 新潟大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面機能学分野:黒瀬雅之、山村健介、井上誠、野口真紀子、Sajjiv Ariyasinghe、山田好秋
目的 起炎剤であるMO (Mustard oil) を閉口筋 (側頭筋) に注入することで誘発される実験的な筋痛 (炎症性疼痛) が、モダリティの異なる2種類の刺激により誘発される開口反射、並びに閉口反射に及ぼす影響を検討した。
方法 開口反射は下顎切歯の歯髄と下歯槽神経の電気刺激により誘発し、顎二腹筋より記録を行った。閉口反射は三叉神経中脳路核の電気刺激により誘発し、咬筋より記録を行った。反射応答を、MO注入前と注入後で比較し、各反射に対するMO注入の効果を評価した。
結果 下歯槽神経刺激により刺激側顎二腹筋では潜時 5.3 ア 0.43 ms (n=10) で反射応答が誘発され、この応答はMO注入後抑制傾向が認められた。歯髄刺激により刺激側顎二腹筋では潜時 19.2 ア 0.2 ms (n=10) で応答が誘発され、この反射応答はMO注入後、下歯槽神経刺激による反射と比較すると、長時間そして強く抑制された。閉口反射には、MO注入直後の一過性 の促通とそれらに続く有意な抑制が認められた。
結論 モダリティの異なる刺激により誘発される開口反射に対して、実験的な筋痛は異なる変調を引き起こすことが示唆された。
演題名 痛みと交感神経緊張
演者 滋賀医科大学生理学第一講座:小山なつ、岩下成人
目的 抜歯時に起こるショックには、局所麻酔薬中毒、血管収縮剤などの副作用によるとも考えられるが、痛みによって誘発されるショックを考える実験を試みた。
方法 ヒトおよび麻酔したラットにハチ毒に含まれるメリチンを投与して、局所と、交感神経が密に分布する部位の皮膚温の変化をサーモグラフィーで解析した。
結果 ヒトの前腕にメリチンを皮下注射すると、局所皮膚温は著しく上昇した。手掌部の皮膚温は注入直後に下降し、その 後注入前よりも上昇した。手掌皮膚温が低かった被検者ほど、手掌部皮膚温の上昇度が大きかった。ラット後肢足蹠にメリチンを注入すると、同側足蹠だけでは なく、対側足蹠の皮膚温も遅れて上昇した。交感神経緊張が減弱している可能性のある1時間後にメリチンを再注入すると、同側足蹠の皮膚温上昇の程度は増加 したが、対側足蹠の皮膚温は変化しなかった。
結論 ヒト前腕の皮膚温の上昇は軸索反射性、手掌部皮膚温の下降は体性交感神経反射、それに続く皮膚温の上昇は交感神 経緊張の低下であると考えた。サーモグラフィーで解析した交感神経緊張の低下は、メリチン特異的ではなく、種々の痛みによっても誘発される可能性がある。 メリチンによる交感神経緊張の低下の程度は強くなかったが、抜歯に対する恐怖を感じている状態で、さらに強い痛みが生じた場合などには、交感神経緊張が消 失し、痛みによるショックが起こる可能性が示唆された。

ランチョンセミナー

演題名 帯状疱疹、歯科と関わるヘルペスウイルス感染症
演者 慶應義塾大学医学部 皮膚科:小菅治彦
目的 抜歯時に起こるショックには、局所麻酔薬中毒、血管収縮剤などの副作用によるとも考えられるが、痛みによって誘発されるショックを考える実験を試みた。
内容 帯状疱疹 (Herpes zoster)はヒトの神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によっておこる疾患です。神経の走行に沿ってウイルスの活性化が見られるた め発症した神経の部位によって特徴的な皮疹の分布を示します。そのため皮疹がすでに出現している場合、診断は容易ですが、皮疹の出現前の段階で神経痛、知 覚異常などの症状のみが認められる場合、他の疾患との鑑別が難しいことがあります。

帯状疱疹では歯痛が唯一の初期症状であることもあります。これは好発部位のひとつである三叉神経領域の帯状疱疹でみられます。その場合、齲歯など を疑い歯科を最初に受診される患者さんもおります。逆に齲歯などに対する歯科的治療が帯状疱疹、単純疱疹などのヘルペスウイルスの再活性化の誘発因子であ ることも知られており、歯科治療の後に歯痛、顔面神経痛、発疹や顔面神経麻痺など帯状疱疹による症状が出現することもあります。そのため帯状疱疹の診断、 処置、治療に関する知識は、普段あまりこの疾患になじみのない歯科口腔外科の医師にとっても必要なものと思われます。

今回は帯状疱疹、特に歯科口腔外科領域に関わりの深い顔面部の帯状疱疹に関して基礎的なことがらを中心にお話ししたいと思います。

演題名 歯痛を初発症状とした三叉神経II・III枝領域帯状疱疹
演者 慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室:永利裕子、和嶋浩一、大塚友乃、矢郷香、中川種昭
目的 初発症状として下顎臼歯部痛と広範囲に打診痛が見られた帯状疱疹の一例を報告する。
症例 59歳 男性 2003年2月28日 右側オトガイ部に数個の水疱を認める。3/1右側下顎大臼歯部に自発痛を 認め近医受診、同部歯肉切開するも症状改善せず。3/2歯痛を主訴として当院救急外来(歯科)を受診。初診時症状:右側下顎小臼歯、大臼歯部の自発痛及び 打診痛、同部歯肉に触診による疼痛(Allodynia)。右側舌半側に自発痛。右側耳部の自発痛及び耳珠の前方に3個の水疱。右側オトガイ部に約3個の 水疱。3/3右三叉神経_・_枝領域に一致して浮腫性紅斑と水疱が散在、一部は膿庖、右耳介は発赤腫脹。疼痛強く、開口・摂食障害あり。聴力障害を認め、 右鼻唇溝はやや浅く、ラムゼー・ハント症候群を疑わせた。3/4皮膚科入院、7日間ゾビラックスの点滴、3/6頃より顔面の発赤腫脹は軽減し表情筋の運動 障害なし、聴力障害改善し、入院時に疑われた顔面神経麻痺は顔面の腫脹によると考えられた。この時点で初診時に認められた臼歯部自発痛、打診痛、歯肉の Allodyniaは消失していた。発熱なく、炎症反応も低下、水疱は痂皮化し、3/11軽快退院。考察三叉神経領域の帯状疱疹では歯痛と打診痛、歯肉の Allodyniaが生じ、歯原性歯痛に非常に類似した症状を呈することが再確認された。
演題名 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による歯髄炎(様症状)は存在するか?
演者 静岡市立清水病院口腔外科:井川雅子、村岡渡、池内忍
静岡市立清水病院口腔皮膚科:杉浦丹
目的 VZVの回帰感染が口腔内の非常に限局した部位に発生した場合、歯髄炎(様症状)が生じる可能性を、その際に生じる歯痛の自然経過から検討した。
方法 過去1年間に当科を受診した、VZVによる歯髄炎が疑われる4症例について、各症例の疼痛強度などの自然経過、抜髄の有無を調査し、2症例についてはそのCF抗体価および炎症反応を計測定した。
結果 歯痛発現から水疱・びらんを形成し疼痛が収束するするまでは、7-10日間の経過である。CF抗体価(ペア血清)では、1例がCF抗体価の上昇を認め、もう1例はCF抗体価には変化が認められなかったがCRPの上昇を認めた。
結論 VZVによる歯髄炎症状では、健全な歯に突然疼痛が発現し、数日間で著明に増悪、ピーク時には睡眠障害を来たすほどの激痛となる。しかしながらこれを過ぎると(7-10病日)該当歯近傍の口腔粘膜には水疱・びらんを形成し、ほぼ時期を同じくして疼痛は消失する。

臨床経過からはVZVにより歯髄炎症状が生じうることが示唆されるが、CF抗体価には反映されなかった。罹患部位が狭い範囲に限局しているため、感染が検査値に反映されない可能性があると推察される。

今後、VZVが関与している歯髄炎があることを証明するためには、蛍光抗体法などにより歯髄から直接抗原を証明する方法を検討する必要がある。

演題名 持続性神経障害性疼痛患者の服薬状況に関する長期予後経過
演者 岡山大学歯学部附属病院 顎関節症・口腔顔面痛み外来:永松千代美、峯篤史、前川賢治、窪木拓男、矢谷博文
目的 非定型性歯槽痛や神経障害性疼痛の長期予後経過についての報告は少なく、本疾患の自然経過に関する情報はほとんどない。今回、我々が経験した非定型性歯槽痛患者の服薬状況を長期経過観察し、5年間にわたる症状の推移について検討したので報告する。
方法 患者は、歯周処置に端を発した慢性歯槽痛を訴えて来院した初診時56歳の女性である。受診直後から服用を始めた 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)により痛みは約1/3に減少したが、観察期間を通じて完全に消失するということはなかった。そこで、受診2年目から5 年間の薬剤服用状況を、患者の服薬日記から年単位に換算して評価した。
結果 アミトリプチリン(10mg)、デキストロメトルファン(100mg)については、5年間継続してほぼ一定量を 服薬していた。消炎鎮痛剤(エトドラク)や抗不安薬(アルプラゾラム)については、服薬量は徐々に減少し、受診2年目に比べ5年後では、年単位服薬量が約 半分となっていた。
結論 非定型歯槽痛症例の長期経過観察から、本症が進行性に悪化する自然経過を示すのではなく、一進一退を繰り返しながら若干軽減傾向がある可能性が示唆された。
演題名 原因不明の歯痛にメフェナム酸が有効であった一症例
演者 東京歯科大学歯科麻酔学講座:野村仰、懸秀栄、一戸達也、金子譲
症例 初診時年齢45歳 女性 近医にて除石後右側下顎に持続痛出現。疼痛消退しないため右側下顎第一第二小臼歯、第 一大臼歯を抜髄、疼痛増強する。根管治療継続により持続痛消退するも、周期的な疼痛及び打診痛温水痛持続のため、当院保存科紹介。6ヶ月根管治療を続ける も症状変化せず、歯科麻酔科紹介となる。歯科麻酔科初診時、打診痛咬合時痛(+)。X線上根尖病巣なし。オトガイ神経麻痺なし。疼痛は7~10日持続し (VAS4~5)、その後3~5週の無痛期がある。疼痛は食事、入浴により増強する。疼痛時250~500mg/日のメフェナム酸の服用により VAS1~2に改善する。
経過及び処置 根管治療を中止し、仮根充、緊密仮封を行うと無痛期の延長が見られた。ATP、アミトリプチリン、ビタ ミンB12投与はいずれも無効であった。右下顎臼歯部に縁上歯石、歯肉の軽度発赤を認めたため除石を行ったところ、さらに無痛期が延長した。歯科麻酔科初 診より10ヶ月以降、無痛期は3~4ヶ月に延長したため、患者の希望により現在メフェナム酸投与以外の処置を中断している。
結論 本症例は、持続的な疼痛刺激によりニューロパシックペインにはいたらぬものの、三叉神経の疼痛に対する感受性が変化した。そのためメフェナム酸により無痛を得ても、僅かな炎症や機械的刺激により疼痛が再燃するため完全に治癒しない状態が継続していると推測された。
演題名 Neuropathic tooth pain と考えられる一症例
演者 九州歯科大学歯科麻酔学講座口腔神経科・疼痛外来:坂本英治、椎葉俊司、吉田充広、坂本和美、長畑佐和子、大津ナツミ、仲西修
日本大学歯学部口腔診断学教室:今村佳樹
目的 Neuropathic tooth painと思われる一症例について検討する。
症例 45才女性。右下第2小臼歯の持続痛を主訴に九州歯科大学病院を受診した。前医にて抜髄処置をうけるが6ヶ月に 渡り症状消退をみなかった。全身既往に特記事項はなかった。患歯は軽度に打診痛があり時折間歇的に激痛があった。レントゲン検査、血液検査に異常は認めな かった。鎮痛薬の投与も行うが変化なく、SGB,トリプタノールにもわずかに反応するのみで症状は持続した。一歯ずつのテストブロックではやはり患歯に症 状は限局しており、歯根膜麻酔よりも髄腔内麻酔がより効果的であった。このことから根尖部のNeuropathic tooth painの仮説の下にリドカイン軟膏の根管充填を行った。症状は軽減し、数回充填処置を繰り返し、徐痛が行えたところで補綴処置がなされ、現在3年経過す るが、症状の再燃は認めない。
結論 抜随処置の歯髄の挫滅、根幹治療薬の化学的刺激からNeuropathic painの進展の可能性は考えられる。Neuropathic tooth painの定義は困難である。本症例の診断、治療についてご意見、ご批判をを頂きたい。
演題名 幻歯痛の診断を考える
演者 東京歯科大学水道橋病院歯科麻酔科・口腔顔面痛みセンター:福田謙一、笠原正貴、半田俊之、村松淳、金子譲
内容 抜髄を施した後、痛みが執拗に残存する異常痛として、幻歯痛(Phantom Tooth Pain)がある。歯髄神経に発症したニューロパシックペインと考えられている。我々は前回、幻歯痛と診断された26名を対象に、その病態分析を行い、抜 髄に至った経緯、疼痛治療に対する反応の他、持続的自発痛(ジーン、ジンジン)の存在、一般的鎮痛薬が無効、打診痛がないことなど、対象者から得られた共 通の特徴について報告した。今回我々は、これらの共通の特徴を有さない抜髄後の異常な残存痛症例について病態分析し、幻歯痛の診断について再検討したので 報告する。
演題名 眼窩下神経 CCI モデルラットに対するGabapentin およびPregabaline 投与の有効性に関する研究
演者 日本大学歯学部病理学教室:野村洋文
日本大学歯学部生理学教室:坪井美行、岩田幸一
目的 GABApentin および Pregabaline の三叉神経支配領域における neuropathic pain に対する有効性を確かめる為、本研究を行った。
方法 152匹の雄性S.D.ラットにおいて右側眼窩下神経にCCIを施し、static allodynia を惹起させ、薬物投与後の口髭部への定量的機械刺激に対する逃避行動誘発刺激閾値(HWT)の変化と、非侵害的機械刺激によりVc内に発現するFos- LIcells 数の変化を観察した。
結果 GABApentin (10,30,100 mg/kg)およびPregabaline (1,3,10 mg/kg )の投与により、投与量依存的に HWT の有意な上昇が認められ、前者では投与後3.5時間、後者では4.5時間後までその傾向は続いた。GABApentin (30,100 mg/kg )および Pregabaline (1,3,10 mg/kg )の投与により saline 投与と比較して、Vc内の刺激側と同側での Fos-LI cells の発現数の減少が認められ、その傾向は深層より浅層の方が顕著であった。
結論 本研究の結果から、両薬物は三叉神経支配領域に生じた neuropathic painに対する新しい治療的可能性を有する薬として期待できると思われる。
演題名 ヒト口腔顔面痛に伴う感覚異常の発現に関する実験的検討
演者 日本大学松戸歯学部歯科補綴学第三講座、顎関節咬合診療科、口腔科学研究所:成田紀之
日本大学松戸歯学部歯科補綴学第三講座、口腔科学研究所:石井智浩
産業技術総合研究所:遠藤博史
目的 口腔顔面痛に伴う感覚異常の発現について考察を加えるため、実験的咀嚼筋痛ならびに手指の冷却が如何に触感覚刺激による誘発脳電位を変調するものか検討した。
方法 被験者には本学教員を用いた。咀嚼筋痛の発現は、左側咬筋に3%および5%の高張性食塩水を0.5 ml注入して行った。また、0.9%生理的食塩水の同部位への注入を対照とした。一方、手指の冷却は左側手指を4℃の冷水に浸漬して行った。口唇の触感覚 刺激にはair puff刺激装置を用い、その出力を脳波計のトリガ-として誘発脳電位(SEP)を加算した。SEPの計測部位はCz、C3、C4とした。
結果 SEP波形には陰性ピークとそれに引き続く陽性ピークの短潜時波形成分がいずれの被験者においても観察された。高張性食塩水の注入によりSEPは低下する傾向を示した。一方、手指の冷却によってはSEPの上昇傾向が示された。
結論 誘発脳電位をもとに咀嚼筋深部痛ならびに手指冷却による口唇の触感覚への影響について検討し、以下の結論を得た。口唇の触感覚は咀嚼筋深部痛によっては抑制され、一方手指の冷却によっては亢進するものと推察された。
演題名 三叉神経第2枝損傷モデル動物における主知覚核ニューロンの反応性
演者 日本大学歯学部生理学教室、日本大学歯学部総合歯学研究所機能形態部門:坪井美行、岩田幸一
日本大学歯学部生理学教室:呉軍
日本大学大学院 口腔外科II:渡部達久
日本大学大学院 局部床義歯:三橋裕
目的 三叉神経第2枝支配領域に作成したneuropathic painをもつモデルラットと正常ラットの三叉神経主知覚核ニューロンの刺激に対する反応性や自発放電の量を電気生理学的に記録し、第2枝領域に発現した異常痛に対する主知覚核の役割を調べた。
方法 SD系雄性ラットを用いた。機械刺激に対する逃避閾値と熱刺激に対する逃避潜時を測定した後、ネンブタール麻酔 下でラットの口腔内から粘膜を切開し、三叉神経第2枝を2箇所緩く4.0 chromic gutで結紮した(CCI)。neuropathic painが確立された動物を用いて電気生理学的実験を行った。
結果 自発放電頻度は、shamに比べ有意に高かった(CCI: 9.4±1.3 Hz, n=30; sham: 0.2±0.1 Hz, n=19, p<0.01)。WDRニューロンの機械刺激に対する反応は、非侵害レベルにおいて、有意に高かった(CCI: 18.0±2.7 spikes/s, n=16; sham: 3.3±0.8 spikes/s, n=19, p<0.05)。
結論 これらの結果より、三叉神経第2枝の神経損傷時に発症する異常痛には、三叉神経主知覚核ニューロンの反応性が強く関与する可能性が示唆された。
演題名 心療内科医との合同症例検討会の試み
演者 九州歯科大学歯科麻酔学講座 口腔神経・疼痛外来:椎葉俊司、坂本英治、坂本和美、長畑佐和子、大津ナツミ、吉田充広、仲西修
内容 慢性疼痛はしばしばうつ状態、不安障害などの気分障害を誘発し、それが疼痛閾値を低下させる悪循環を作っている ことがある。投薬や簡易精神療法、Solution-Focused Brief Therapyなどのカウンセリングで疼痛を緩和するように努力しているが歯科大学の疼痛外来では対処に苦慮する症例も多くある。
SSRI、TCAなどの抗うつ薬は処方可能であるが、良質の睡眠、下行性抑制系による鎮痛を期待した投薬で抗うつ作用を期待する投与量ではなく投与期間も 1ヶ月程度を限界とし長期になることはない。カウンセリングを行うにしても疼痛外来担当の歯科医師と患者数のアンバランスより患者1名に使用できる時間は 限られており十分な対処は困難である。また、精神分裂病や口腔単一の妄想性障害などのように明らかに心療内科や精神科による抗精神病薬の投与が必要と思わ れる症例にもよく遭遇する。そのような患者は心療内科や精神科に紹介することが多いが、その後の疼痛治療を当科で継続するためにも綿密な連係体制が必要で ある。そこで理解の得られた心療内科および精神科医との平成13年1月より月1回の合同症例検討会を行っている。口腔顔面痛を他科からみた場合の見解や対 処法に関する適切なアドバイスが得られて非常に有効である。合同症例検討会の有用性を症例を交えて報告する。
演題名 当帰芍薬散が著効した非定型顔面痛の1症例
演者 東北大学大学院歯学研究科顎顔面口腔外科学講座顎外科咬合形成学分野:千葉雅俊、福井功政、越後成志
目的 慢非定型顔面痛は、頭痛や顔面痛のどの分類にも当てはまらない原因の明らかでない顔面痛であり、有効な治療法は確立されていない。われわれは非定型顔面痛に当帰芍薬散を投与し、速やかに疼痛を改善できた症例を経験したので報告する。
症例 7歳女性。初診の1年3か月前に左目に疼痛を生じ、9か月前に眼科や脳外科を受診したが問題がないと言われ、薬 物療法を受けたが効果はなかった。咬合が原因と考えてA歯科で咬合調整を受けたところ、眉間に腫脹と頭部から顔面に疼痛を生じるようになった。B歯科でス プリントと補綴治療を受けたが疼痛は変わらず、C歯科より当科を紹介され受診した。疼痛は両眼窩から頬骨、右側咬筋付近にあり、非常に不快な疼痛が持続 し、疼痛によって生活の質が著しく低下していると申告した。開口量は39mmで咀嚼筋の圧痛を認めたが、顔面痛は顎運動で変わらず、疼痛を誘発するトリ ガーポイントも存在しなかった。頭蓋顔面のMRIで器質的疾患は認められず、臨床検査でも異常はなかったが、心理検査で不安と抑うつ傾向を認めた。非定型 顔面痛と診断し、器質的疾患はないことを保証したうえで、漢方医学的に虚証で水毒とお血を認めたので当帰芍薬散7.5gで投与した。8日後に疼痛は消失 し、以後、疼痛は良好にコントロールされた。
結語 非定型顔面痛に漢方薬が有効な場合があり、試みるべき治療法の一つと考える。
演題名 チーム医療が奏効した外傷後の顔面痛の一例
演者 正司歯科:正司喜信
目的 チーム医療が奏効した外傷後の顔面痛の一症例を経験したので報告する。
症例 24歳の女性で失業中である。平成14年3月に交通事故に遭い左頬骨骨折受傷した。某形成外科にて整復固定を行 い術後経過は良好であったが顎関節の雑音および顎の痛みを主訴に同年7月に紹介され来院した。右顎関節に開口時の関節音、左咀嚼筋に圧痛、外科処置周辺の 歯肉に感覚異常を認めたため、一次診断として1)右顎関節の円板転位、2)左咀嚼筋の筋痛、3)外傷性のニューロパシー性疼痛、を疑った。同年7月から9 月にかけて口内用のステント療法およびスプリント療法、薬物療法、理学療法を行い症状は50%程度改善された。同年9月に睡眠障害のため心療内科に再紹介 しカウンセリングおよび薬物療法を併用したところ、同年11月に疼痛はほぼ緩解した。平成15年1月の時点で症状の再発なく仕事にも復帰している。
考察・まとめ 口腔顔面痛の治療目標は疼痛の軽減、機能の回復などであるが、一部分だけに対する限られたアプローチによって治療の成果はしばしば不十分なものとなる。そのような場合、チーム医療によって治療成功の度合いをより高めることができるのではないかと考える。
演題名 慢性口腔、顎、顔面痛患者を対象とした疼痛教室の試み
演者 東京医科歯科大学大学院疼痛制御学:川島正人、芝地貴夫、山崎陽子、真秀重成、鈴木長明
長崎大学大学院生体情報科学:戸田一雄
目的 慢性口腔、顎、顔面痛では治療に難渋することが少なくない。そのため患者は長年の痛みのため心理社会的に問題を 抱えていることが多い。また歯科領域の疼痛は社会や家族から理解されず、患者が孤立感を抱く場合が多く認められる。さらに治療期間が長くなると一対一のカ ウンセリングでは心理的介入が起こる可能性があり、個人の治療では限界に達する場合も認められる。そこで孤立感の緩和、心理介入の防止、疼痛自己管理の強 化、認知行動療法の強化を目的として平成14年4月から疼痛教室を開催している。
方法 参加対象は担当医と信頼関係が構築されている患者とした。一回の所要時間は約一時間半で、内容は前半で痛みに対する理解を得るため痛みに関連した講義、質疑応答を行い、その後患者同士の自由討論を行っている。
結果 多くの症例で痛みに対する不安や恐怖が軽減した。また痛みの軽減や痛みのコントロールが可能になった症例も観察された。
結論 疼痛教室を開催することは痛みの治療効果を向上させるための一助となると考えられた。

第8回「痛みの神経科学研究会」神田川ワークショップ

前日に第8回「痛みの神経科学研究会」神田川ワークショップを開催いたします。

日時 2003年5月31日(土)午後4時~6時
場所 日本大学歯学部大講堂(東京都千代田区神田駿河台1-8-13)
主管 痛みの神経科学研究会
プログラム

特別講演

1)Brainstem and Thalamic Mechanisms Involved in Orofacial Nociceptive Transmission and Central Sensitization
Division of Biological Sciences, Faculty of Dentistry, University of Toronto:Prof.Barry J.Sessle
2)慢性疼痛における脊髄チロシンキナーゼの関与について The involvement of spinal tyrosine kinases in chronic pain
獨協大学医学部麻酔科教授:高野義人